アルプスの植物を学ぶ

Flora alpina: Ein Atlas saemtlicher 4500 Gefaesspflanzen der Alpen

Flora alpina: Ein Atlas saemtlicher 4500 Gefaesspflanzen der Alpen

  • 作者: David Aeschimann,Konrad Lauber,Daniel Martin Moser,Jean-Paul Theurillat
  • 出版社/メーカー: Haupt Verlag AG
  • 発売日: 2004/06/01
  • メディア: ハードカバー
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今日は他のラボの大学院生とディスカッション。非常に面白い。たぶん、こういうことが、PIとして求められている仕事なのだが、自分の仕事がすすまないともいう。


時間が細切れなので、新しいことを勉強をしてみることにした。ちょうど届いたアルプスの植物図鑑の解説を読んでみた。図鑑自体はドイツ語とフランス語でしか出版されなかったのだが、去年になって英語版のイントロダクションが出たのだ。


英語で読めてみると、この図鑑は非常に情報量が多い。生育地の水環境、pH, 土壌、生育型、一緒に生えている植物などの生態情報が、記号にして詰め込んである。チューリヒにいたLandoltなどが、はしから順にこうした生態情報を蓄積したことがベースになっている。分類学を超えて、この先の研究につながっていくだろう。アルプスの植物が、植物系統地理学の先頭を走っている理由の一つがこういうところにあると思われる。


日本の植物についても、埋没しているにしろ知識は集積していると思うので、こうした図鑑が作られると面白いだろう。Flora Alpinaを作る際の大きな障害は、アルプスが数カ国にわたるために、種名その他が統一されていないことだったようだが、日本列島ではその問題は小さい。


最終氷期の氷河の消長がよく知られており、現在の分布と比べると興味深い。例えば、最近共同研究で調べたタネツケバナ属のCardamine asarifoliaは、暖かくなった後もレフュジア(氷河がなく生存可能だった場所)からほとんど分布を拡大していないようである。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=16527494&query_hl=1&itool=pubmed_docsum

アルプスの植物の中で、アブラナ科は267種と種数が非常に多い。キク科、イネ科、マメ科についで4番目である。まだまだ見たことがない植物ばかりである。