コアレセント理論ワークショップ

ワークショップの初めは、コアレセント理論のみならず、分子集団遺伝学を築いた1人である大御所Hudsonの講義。Hudson's estimatorやHKA testのHなどに名を残している。コアレセント理論は、Kingman (1982), Tajima (1983), Hudson (1983) らにはじまる。


講義は、論旨明快で驚くほどわかりやすかった。数学的な説明と、直感的な説明との両者がうまくバランスがとれている。講義のあとに、「教科書書いてください」と言ったら笑っていたが、計画はあるようだ。コアレセント理論の教科書としては、難しいものが一冊出ているだけなのだ。
 

共同研究者Grahamと、はじめて直接会うことができた。陽気なイギリス人である。やはりメールだけでなく顔を合わせるとよい。自然選択の検出法の講義では、多くの新しい情報を得ることができた。共同研究のシミュレーションについて、また少し理解が深まった。


新しい自然選択検出法として、Selection on Standing variationというのが面白い。ヒトがヨーロッパに入って環境がかわったとき、それまで中立で数%の頻度だった突然変異が、正の自然選択を受けた、というシナリオが考えられているらしい。この場合、変異を含んだ一群の対立遺伝子が選択を受けるので、塩基多様度も単純には減らず、総合的に解析する必要がある。シロイヌナズナなどの氷期-間氷期サイクルへの応答で、こういった可能性があるのではないか。

Przeworski M, Coop G, Wall JD.
The signature of positive selection on standing genetic variation.
Evolution Int J Org Evolution. 2005 Nov;59(11):2312-23