ダーウィンと異型花柱性

The Different Forms of Flowers on Plants of the Same Species

The Different Forms of Flowers on Plants of the Same Species

ダーウィン著作集〈3〉植物の受精

ダーウィン著作集〈3〉植物の受精

植物の自殖を防ぐメカニズムとして、私が研究している自家不和合性と並び、異型花柱性が知られている。ダーウィンは、自殖の進化のみならず、異型花柱性についても大部の著作を残している。


異型花柱性heterostylyとは、簡略に言えば、種内で雌しべ・雄しべ長に長短のタイプがあり、同じ花の中での自家受粉を防ぐ形態的なシステムのことである。図がないと説明しがたいので、http://en.wikipedia.org/wiki/Heterostyly参照。サクラソウprimroseがよく知られている。はじめに気が付いた人々(Darwin, Hildebrandら)はすごいと思う。


植物系統学科で異型花柱性を研究しているElena Contiが、スイセンの異型花柱性を発見しユニークな研究を続けているJuan Arroyoを招聘したセミナーがあった。本人の新しい論文はPubMedに入っていないので、共同研究者の総説を引用しておく。Lloyd & Webb (1992) のポリネーターの生態的モデルの方が、Charlesworth & Charlesworth (1979)の近交弱勢に基づく遺伝的モデルよりもっともらしいという。
Barrett SC, Harder LD.
The evolution of polymorphic sexual systems in daffodils (Narcissus).
New Phytol. 2005 Jan;165(1):45-53. Review.


今や、19世紀から知られているような進化・生態学的に面白い現象を、総合的な視点で解析するだけの素地が整ったということだろう。異型花柱性を決める遺伝子が単離できたら、面白い研究が相次ぐことは疑いない。興味を持っている研究室が複数あるとは聞いているし、同じ建物に異型花柱性の研究室もあるので、これからの進展に期待したい。