エピジェネティクス

ショウジョウバエシロイヌナズナの遺伝学を使って、ヘテロクロマチンの研究を続けてきているGuenter Reuterのセミナー。エピジェネティクスのメカニズムの研究はいうまでもなく近年の生物学の焦点のひとつ。進化的なタイムスケールでもエピジェネティクスがきっと重要だろうとみなうすうす思っているのだが、示すのはなかなか難しい。


シロイヌナズナには、ショウジョウバエのヒストンメチル化酵素Su(v)3-9のホモログが10もあり、そのうちでSUVH2やKRYPTONITE / SUVH4が主に働いている。これらはヒストンH3とH4をメチル化し、その結果DNAがメチル化されて(そのメカニズムは不明)、染色体を密にパッキングされ、遺伝子発現の抑えられたヘテロクロマチン領域が維持される。


内容を簡潔にはまとめがたいが、哺乳類、ショウジョウバエシロイヌナズナを比較すると、ヒストンの修飾される位置と、修飾酵素はだいたい保存されている。しかし、どの酵素がどの位置をいくつ修飾するかには違いがあり、比喩的に「ドイツ語とスイスドイツ語の違い」などといっていた。


Naumann K, Fischer A, Hofmann I, Krauss V, Phalke S, Irmler K, Hause G, Aurich AC, Dorn R, Jenuwein T, Reuter G.
Pivotal role of AtSUVH2 in heterochromatic histone methylation and gene silencing in Arabidopsis.
EMBO J. 2005 Apr 6;24(7):1418-29


こちらのグループの論文の方がストーリーとしては読みやすい。
Jackson JP, Lindroth AM, Cao X, Jacobsen SE. Control of CpNpG DNA methylation by the KRYPTONITE histone H3 methyltransferase.
Nature. 2002 Apr 4;416(6880):556-60