注射の痛さ、日米欧比較

念のため、ダニの媒介する脳炎の予防注射を受けてきた。環境学科の人に、フィールドワークをするならとすすめられたのだ。


去年のこと、アメリカでラボ全員でインフルエンザの予防注射に行ったときに文化差が見えて面白かった。フィリピン出身の旧ボスが、注射にトラウマがあるらしく結局なんだかんだ言って行かなかった。他のアメリカ人は何のためらいもない。行ってみると、全く痛みがないことに驚いた。触られたことにも気づかないくらいだ。


午後から大学の旅行医療センターに行ったら、アフリカやインドネシアに行く可能性があるかときかれ、はいと答えた。すると、ポリオ&破傷風も加えて、2本続けて打たれる羽目になった(絶対行くぞ!)。アメリカの経験からの期待通り、ここの注射もほとんど痛みがなかった。日本での小さい頃の予防注射のイメージといえば、痛く、子供が泣き叫び、ガーゼで血を抑えるといった悪いイメージしかない。なぜ違うのか? 限られた経験からだが、排他的でないいくつかの可能性を挙げてみる。


仮説1 日本の文化では痛みにたえることが美徳とされていて、訓練されている。たまたま手に入ったアエラの5月号によれば、無痛分娩が日本で広まらないのは、「お産の痛みに耐えてこそ母親になれる、としてきた我が国の伝統的な考え方」のためだそうだ。


仮説2 欧米人は体質的に痛みに弱い
ここで思い出すのが、欧米人が辛さに非常に弱いことである。3月にアメリカの研究室旅行で辛口こくまろカレーを作ったら、あまり食べてもらえなかった。そして、痛みと辛みは同じカプサイシンレセプターを介しているのである。遺伝子レベルで違う可能性はあるだろうし、移民などで検証可能だろう。


仮説3 技術が進んだ
日本でこの数年は注射を受けていないから、世界的に改善しているのかもしれない。


仮説4 医療技術格差
欧米の方がうまい、または特にアメリカでは痛くしたら訴えられかねないので慎重。歯医者の治療もまったく痛みなしであった。