種とは何か

David Baumのセミナー2つ目である。欧米では今でも真剣に種の定義をどうすべきか議論しているのだ(あまりばかにしすぎないように)。


問題意識は、地球環境保護などの社会への責任であるように思われる。哲学的な観点からみれば、これ以上議論してもあまり進む気がしないのだが、プラクティカルには種か亜種かで保護活動が変わりうる。セミナー後の議論では、一般の植物愛好家を困らせることはできない、という意見が出ていた。Davidがこんな話題でも論文を書いているとは知らなかった。


論旨としてはこんなところ。分類のランクとしての種と、進化の単位としての種(生殖隔離etc)は一致しえない。それならば、後者は集団populationとでも呼んでおけばいいではないか。


どこで種と切るかを判断するには、まだデータが足りない。David本人は数年前に、全ての遺伝子で同じ系統樹になるくらい離れたグループといっていたようが、たとえば全ゲノムを用いて系統樹を書いた次の論文をみると、75%くらいで切るといいのかもしれない。
Rokas A, Williams BL, King N, Carroll SB.
Genome-scale approaches to resolving incongruence in molecular phylogenies.
Nature. 2003 Oct 23;425(6960):798-804.
ちなみに、この論文、ノースカロライナの統計遺伝学者たちの評価では、データ量を増やせば推定精度が上がることは2000年前から分かっていたのだから、Natureに乗せるほど新しいことはない、と。