Evo-Devo:植物の形とLEAFY遺伝子

今日のセミナーは、植物のEvo-Devo分野の創始者の一人であるDavid Baum。進化学会のシンポジウムに呼んでもらって以来、いつも会うのを楽しみにしている。系統学のバックグラウンドからスタートして、発生生物学との間をつなごうとしている。


Yoon HS, Baum DA.

Transgenic study of parallelism in plant morphological evolution.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Apr 27;101(17):6524-9. Epub 2004 Apr 19


モデル生物シロイヌナズナの花序形態はアブラナ科の典型で、茎に次々に花が咲いていく。一方、アブラナ科の中でLeavenworthia属やIdahoa属など少なくとも4回独立に、「ロゼット開花」というものが進化した。これは、それぞれの茎に1つずつしか花がつかないため、地上から束のように花がでるという形態である。彼らの仮説は、シロイヌナズナの花序形態を決めるキーとなる遺伝子LFY (LEAFY)が、この形態進化に関わった、というもの。そこで、これらの植物からプロモーター付きでLFYを単離し、シロイヌナズナのlfy突然変異体に導入した。その結果、花序形態が、ロゼット開花に(ある程度まで)近づいたのである。このことは、LFYがこの形態進化の少なくとも一部を担ったことを示唆する。


「非モデル生物」を使っている限界で、本当にLFY遺伝子が形態進化を担ったのかという点の詰めが甘い。痛い質問は私がするものだと薄々了解されているので、その辺を聞いてみたが、同じことが気になった人も多かったようだ。上の論文以降にデータがかなり増えて、状況証拠は積み重なったという印象は受けた。


夜はDavidを囲む夕食会。系統学科の人たちと話すよい機会になった。もうすぐPh.D.審査を受ける学生がいて、Ph.D.面接での嫌な質問が話題になった。日本みたいに形式的ではなく、議論できる力そのものが審査の対象である。「あなたの研究は社会にどういう関係があるのか?」などというのは簡単な方で、植物系なのに「ペンギンの泳ぎ方をグラフを使って説明しなさい」というのがあったそうである。