コロンビアの大学・標本庫訪問

Shimiken2006-09-08

予定は未定の南米なので、行ってみないと何が起こるか分からない。食品工学みたいな研究室に連れて行かれて、正直言って何でここまで畑違いの話を聞く必要があるのかと思う時間も長かった。一方で予期せず、コロンビアの生物多様性のデータベースが、高い精度で完成間近と言う話を聞くことも出来た。


標本庫では、数千のタイプ標本を収蔵しており、かなり整備されているという印象を受けた。西洋に収奪されてタイプが少ないとは言うが、日本のタイプ標本より多いのではないだろうか。正確に日本の数は知らないが、かなりの部分はシーボルトらによってオランダやロシアにあるはずだ。途上国の生物資源問題の行く末によっては、タイプ標本を本国に返還するという流れにすらなるかもしれない。今回の会議の主要な話題の1つは、途上国の遺伝資源の法的整備でもある。


標本をみていると時間を忘れてしまう。他の人たちもいるのでチューリヒに貸与してもらうことにした。たまたま標本庫係が私の講演を聞いて気に入ってくれて、手続きが非常に簡単に進んだ。こうしていろいろな人と知り合っていくのだろう。

南米の雲霧林

Shimiken2006-09-07

mist forestは、今まで訪ねたことのあるどんな森とも印象が大きく違った。熱帯雨林よりも高度が高いが、一年中霧によって水分が供給され、常緑樹が茂っている。写真下のようなドングリQuercus humboldtiiは、氷河期以降に北米から入ってきて種分化したと考えられている。ドイツからきている植物園長が何にでも詳しく、話が非常に面白かった。

ヨーロッパとラテンアメリカの共同研究

Shimiken2006-09-06


数日他分野の人と話し続けていると、面白いアイデアがどんどん出ている。
こんなシンポジウムに出てきた。
http://www.molconnect.org/portal.php?domain=1&category=17&page=74&lang=1


新しい研究の方向性を考えるには、やはり何日かまとまった時間が必要だ。
これから5年のスパンで実現可能なことが見えてきたが、きっと1年後にはその次に考えがいたり、
今考えたことは不十分だと感じているだろう。


ヨーロッパとラテンアメリカの共同研究を促進するためのプロジェクトらしい。どういうものかよく知らず来たが、非常に役立った。熱帯は野生種・栽培種ともに、低地から高山まで多彩で楽しい。そして、ヨーロッパに知り合いが増えたのはうれしく、またこれからに不可欠である。


写真は懇親会で、ボゴタの大学サークルによる民族舞踊。

ヨーロッパのポスドク

参加者には、EUの科学政策担当者(アメリカでいえばNSFのプログラムオフィサー)も来ている。話の中でたまたま「最近日本のポスドクが、アメリカよりもヨーロッパに行く傾向が強まっている」と言ったら、ずいぶんとうれしそうだった。ヨーロッパとしてかなり力を入れてきたのだろう。本質的には人材のとりあいなので、日本は何もしないと取り残されるだけである。

黄金の先住民文化

午後は黄金博物館へ。1000年も前から南米にすぐれた文化があったことに感銘を受けた。土器は中国・日本に類似を感じさせるものもあった。アメリカにいたときは、先住民博物館みたいなものがあちこちにある割には、あまり美しさを感じないこともままあったのだが、文化が成熟したのは南米の側だったのかもしれない。トウモロコシの栽培化も南の方である。


写真右は、ポポロという最も有名な金細工で、貝殻(石灰)を砕いてアルカリ性にして、コカの吸収をよくするための道具だという。ガイドの話すところによれば、先住民はコカの葉を噛んで、3日間も1つの話題について議論し続けたという。「それでは私たちは明日から3日間、コカも無しで1つの話題を議論するのか」ということになる。こう考えると、科学者はなかなか常人では務まらない仕事をしているのかもしれない。明日から生態ゲノムで3日間である。

南米を出入りした植物

Shimiken2006-09-03

ボゴタの植物園へ。専門家が多いと話が盛り上がって面白い。ドングリ(Quercus)やクルミ(Juglans)など、北半球で見慣れた属(ただし別種)があることに少々驚いた。果実が大きいので鳥によって海を越えるとは考えがたい。コロンビアの研究者に聞いたところでは、700万年程度前から南北アメリカがつながりかかるときに、植物の北上・南下が起こったという。北上したのが写真のマキ科のPodocarpus、南下したのが前述の2つなど。ヒトとチンパンジーの分岐が500万年だから、種分化には十分な時間だ。こういう状況で植物地理学が面白い。

Shimiken2006-09-02

土日にチューリヒ空港の朝便に乗ろうとすると大変だ。トラムによっては始発が遅く、遠回りして5時には出ないといけない。空港でもう1人の参加者Rと待ち合わせ、快適に空の旅を過ごした。といっても、Rは大学院生の論文添削に頭を痛め、私は論文査読。プロフェッサー仕事も忙しいのである。

南米コロンビアの首都ボゴタに到着。山に囲まれて標高2640mほど、770万人を抱える近代的大都市である。空港にもホテルから迎えが来ていたので全く安心だった。

ホテルの入ろうとすると、イヌが寄ってきて荷物をくんくん嗅ぐ。
This is Colombia
である。麻薬や爆弾をしらべているらしい。昼を見ている限りでは危険な雰囲気はないが、1人ではホテルから出られなさそうだ。